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点字ブロックものがたり

【第2回】 セント・バーナードがとりもつ仲が点字ブロックを生み出した!

セント・バーナードの縁で知り合った精一と英行

「点字ブロック発祥の地」モニュメントに、“三宅精一氏”(点字ブロック考案者)、“岩橋英行氏”(日本ライトハウス理事長)というふたりのキーパーソンの名前が入っていたのを覚えていますか。点字ブロックの歴史は、ふたりの出会いに始まります。
戦後の岡山で、復員後に町の発明家として活躍していた三宅精一は、末弟の三郎(現、安全交通試験研究センター理事長)に負けず劣らず、無類の動物好きでした。
お気に入りだったのは、セント・バーナード。セント・バーナードといえば、『ハイジ』に出てくる賢いヨーゼフは知っていますよね。『フランダースの犬』のパトラッシュもそうだったかな? 脱線してしまいますが、当時の日本ではきわめて珍しい犬でした。しかも、三宅兄弟が手に入れた雄雌のつがいから、一匹の仔犬が生まれたのです。

セント・バーナードの仔犬──これは、愛犬家たちにはちょっとしたニュースでした。これを聞きつけて、西宮から岡山まで足を運び、三宅家の門を叩いたのが岩橋英行その人だったのです。未知の国からやってきたワンちゃんのことを熱っぽく語り合う精一と英行。ふたりは、たちまち意気投合して、家族ぐるみの付き合いが始まりました。
英行を通して、精一は日本ライトハウスのことを知り、盲人の世界に興味を惹かれていきます。それがやがて、英行の失明ということになり、精一はいたく心を痛めました。英行が道を歩くのに手を貸しながら、「視覚障害者の安全歩行」という課題解決が、発明家としての、そして英行の親友としてのライフワークになっていったのです。

ふたりを知る朝日新聞編集委員の藤田真一氏は、このように語っています。
「三宅精一氏は、視力を失った岩橋さんにますます近づいていきました。そして、“盲”とは何かについて目を開いたのです。それを具体化したあかしが、点字ブロックの考案であったことは言うまでもありません(中略)
ひとりの晴眼者からひとりの盲人へ贈る愛のあかし、それが点字ブロックという形をとって表現されたのだと思います」
          (岩橋英行著『白浪に向いて 三宅精一氏を語る』序文より)
犬がとりもつ仲が、点字ブロックという愛のあかしを生んだ──藤田氏は、この点字ブロック誕生の物語を子どもたちの教科書にとりあげてほしいと訴えています。
そういえば、セント・バーナードは、もともとはスイスのレスキュー犬です。雪の中に人が1メートル深く埋まっていても、雪上に倒れた人が3キロ離れていても、鼻で嗅ぎ分けられる頼もしさ。あの仔犬は、経済成長を追い求め、福祉をないがしろにしていた戦後の風潮に一石を投じるレスキュー犬でした。この国の障害者福祉に一筋の光を射した“救いの主”として、私たちは記憶にとどめておかなければいけませんね。

2016/10/13

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