――もう君は、独りぼっちなんかじゃない――

無念にも、愛する娘を暴漢に殺され自暴自棄になった中年男、佐藤。あまりにも理不尽な最期を迎えた娘の為、佐藤は怒りにまかせ復讐を遂げる。
行き場を失った中年男は、独り長距離バスに乗って逃亡を企てる。そのバスの車中で偶然ロシアから来た女パステルと出くわす。パステルもまた家族を失い、失意のどん底にあるロシア人のクォーターだった・・・。

全編カラーなのに、モノトーンにも思える落ち着き払った画面構成が見事！孤独な魂を共有する男女が、安住の地を求め逃避行を続けるうちに、互いを理解し合うようになるあたりから、二人のキャラクターは一気に彩りを増していく。
ヘナチョコな中年男を演じる大江千里の枯れた演技も素晴らしいが、彼が独白の代わりに歌う「静寂の場所」が胸を打つ。監督が意図する主人公の心象風景と、祈りにも似た大江千里の歌声が融合し、圧倒されるほどの余韻を残す。

不思議系お姉ちゃん、パステルを演じるティアラも映画初主演とは思えぬほど、堂々としてエクセレントだ！

旅路の果てに二人を待ち受けているのは、理想郷か、それとも・・・。それは劇場で確認しよう！


text by...  茶柱達蔵

2007/08/24